栃木県宇都宮市の清原工業団地に位置するキヤノンの製造拠点は、実は同社にとって極めて重要な技術開発と生産の中核を担っています。
この工業団地エリアには光学機器事業所と工場の複数の施設が集まっており、首都圏からのアクセスの良さと広大な敷地を生かした大規模な生産体制が特徴的です。
宇都宮は北関東自動車道の開通によって東西方向のアクセスも飛躍的に向上し、製品の物流面でも理想的な環境が整っています。
| 施設名 | 所在地 | 主な機能 |
|---|---|---|
| 宇都宮光学機器事業所 | 栃木県宇都宮市清原工業団地 | 半導体製造装置の開発・生産 |
| 光学技術研究所 | 同上(事業所内) | 光学技術の基礎研究 |
| 宇都宮工場 | 清原工業団地19-1 | コンシューマー製品・産業機器の製造 |
興味深いのは、この地域の環境的な優位性です。雷が少なく、冬季でも雪による操業停止のリスクがほとんどないという気候条件は、精密機器の製造において予想以上に大きなメリットとなっているようです。
清原工業団地における雇用規模
清原工業団地全体でキヤノングループは約4,500名の従業員を抱えており、地域経済における存在感は計り知れません。
栃木県の企業紹介によると、宇都宮の各施設はキヤノン全体の従業員約26,000人のうち、かなりの割合を占める製造拠点となっています。住環境も比較的恵まれており、初めて栃木に転勤してきた社員が長年定住するケースも珍しくないとのことです。
光学技術から半導体装置まで幅広い製品ライン
宇都宮の施設群では、私たちが日常的に目にするカメラやビデオカメラといったコンシューマー製品から、産業用の高度な機器まで実に多様な製品が生み出されています。
特筆すべきは、世界シェア50%を超える放送用レンズの製造拠点であるという点でしょう。テレビで見るスポーツ中継や報道番組の映像の多くが、実はこの栃木の地で作られたレンズを通して撮影されているわけです。
半導体製造装置という新たな柱
近年の宇都宮事業所における最も注目すべき動きは、半導体製造装置事業の大規模な拡大です。
IoTや5Gの普及に伴う半導体需要の高まりを受けて、キヤノンは2022年に新工場の建設を発表しました。約380億円という巨額投資を行い、2025年上期からの稼働を目指しています。
- 半導体露光装置の開発・製造体制を大幅に強化
- 新工場の敷地面積は約70,000平方メートル
- 中長期的な需要増加に対応した生産能力の拡張
この投資は、キヤノンが光学技術で培ってきた強みを半導体製造という先端分野に展開する戦略的な取り組みといえます。
光学機器事業所では露光装置に使われる精密な光学部品も製造しており、カメラレンズ製造で磨かれた技術が最先端の産業機器に活かされる構図になっているんです。
40年以上の歴史が刻む地域との絆
キヤノンと栃木県の関係は1965年まで遡ります。当初は光学工業株式会社として宇都宮に進出し、その後1969年に栃木キヤノン株式会社へと社名変更しました。
当時は市内中心部で操業していたものの、1977年に清原工業団地への移転を果たし、本格的な拠点拡大が始まります。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1965年 | 光学工業株式会社として宇都宮進出 |
| 1969年 | 栃木キヤノン株式会社に社名変更 |
| 1977年 | 清原工業団地に移転、本格稼働開始 |
| 1982年 | キヤノン株式会社と合併、宇都宮工場に |
| 1983年 | 光学機器事業所を設立 |
| 2000年 | 光学技術研究所を開設 |
研究開発から生産までの一貫体制
1983年の光学機器事業所設立、そして2000年の光学技術研究所開設により、宇都宮は単なる製造拠点ではなく研究開発の中核へと進化しました。
光学技術研究所で生まれた基礎研究の成果が、そのまま隣接する事業所や工場で製品化されていく流れは、開発スピードの面でも大きなアドバンテージとなっています。
半世紀近くこの土地で操業を続けてきた実績は、単なる工場という枠を超えた地域社会の一員としての存在を物語っています。